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by beta-endorphin
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ガッツ石松の祈り

ガッツ石松のエピソード。こういうのを読んでいると、自分の子供に何不自由なく物を与えるのもどういうものかと考えてしまう。

Kansas City時代に担任であった非常にmatureであった苦学生を思い出してしまった。




中学2年の春。石松は父と家庭裁判所にいた。若い係官にひたすら頭を下げる父。悪童だったが、家裁に呼ばれるようなことはしたつもりはなかった。だから謝ることしかしない父に、反発と切なさがないまぜになった感情を抱いた。

 「確かに集団でいろんな悪さはやりましたが、呼ばれたのは私だけ。その理由は分かっていました。極貧家庭の小せがれだった私が一番たたきやすかったからでしょう。父もそのことは分かっていたはずなのに、頭を下げることしかできなかったのです」

 苦く悔しい過去を思いだしたためか、石松の顔は心なしか赤くなった。


 やさしいが生活能力のない父。男勝りの母が日雇いの肉体労働で一家6人の暮らしを支えた。石松も小学校3年からは新聞配達をして家計を助けた。雨が漏り風が吹き抜けるあばら家。いつも腹を空かしていた。栃木の冬の風は厳しかったが、世間の風当たりのほうがもっと厳しかった。

 世間並み、人並みがいっさい許されない環境の中、石松は世間に自分を主張できるのは腕力だけと思い至り、その悔しさを暴力で発散するようになった。中学に入ると近隣の中学を束ねる総番長になっていた。

 「家裁で頭を下げる父の姿に、《オレは謝るようなことはしていないのにどうして父ちゃんは謝るんだ》と、はじめは反発を覚えましたが、じきに父がふがいない自分自身を責めているように思えて…。そのときですよ、きっぱりと悪童を卒業しようと決めたのは」

 家裁からの帰り道、父は石松をラーメン屋に連れて行った。石松がラーメン屋に入るのは初めてだった。父は店主に値段を確認し、ポケットをまさぐった。

 席に着いて父が注文したのは1杯だけ。それしかカネがなかったのだ。

 初めて食べるラーメンのおいしさに興奮した石松はスープ1滴も残さずに流し込んだ。そのようすを黙って眺めていた父は、スープの脂のついたどんぶりにやおら水を入れ指でかき回した。「何をするんだろう」と不思議に思う石松の前で父はそれを飲み干した。

 「あのシーンは、いまも私の心の傷となって残っています。父も腹を空かせていたのに、それに気づくこともなくひとりで食べきってしまった自分の無神経さに腹が立った。同時に、貧しさの中で懸命に生きている家族を、自分の手で絶対に幸せにしてやろうと誓いました」
by beta-endorphin | 2007-05-09 13:12 | Misc